こんにちは!アトリエCaimaです。
11月25日(土)に、こどもマンガ・イラスト教室の特別授業として、アトリエCaima展の美術鑑賞会を行いました。
アトリエCaima展では、彫刻、油画、日本画、特殊造形、イラストと多様な作品の展示があり、難しく考えるのではなく、アートを観て自分が感じたことを自由に話し合いながら鑑賞し、みんなで楽しみました。
君たちは怪盗だ!
小学生~中学生の生徒たち。はじめてホンモノの絵画や彫刻、アートに触れる子がほとんどです。
そのため、ちょっと楽しい設定を追加しました。
それは「怪盗になったつもりで、1つ家に持って帰るとしたらどれを選ぶか考えよう!」というもの!あとで選んだ理由と盗んだ後どうするかも教えてねと付け加えて、美術鑑賞スタートしました。
選び終わったところで、1人ずつ回答してもらいました!面白いことに全員違う作品を選びました。
「(左の)ネズミのキャラが可愛い、人間が渋くてかっこいい。」
「インパクトがすごい。面白いから。」
「(左の)大きい絵がかっこいい。すごい。」
「筋肉がすごい。家でずっと眺めていたい」
「像にメイクしたい!飾る」
「(右の)風景がかっこいい。上のほうまで描かれている(縦長構図のこと)のがいい」
「白い毛がふわふわしていて可愛い。」(保護者参加の方)
などなど、選んだ理由も彼らの個性がでているなと感じました。また、盗んだ後にどうするかという質問では「家でずっと眺めていたい」や「海外オークションに出す!」「てっちゃんの事務所に送りつけて本人の反応が観たい!」など意見があり面白かったです。
このように、怪盗になって作品を観るという視点は、作品と自分の距離を縮めてくれます。作品を「買いたい(ほしい)」「売れるかも」「家に飾りたい」という思いは、その作品が自分にとって価値があると感じたということです。こんな風に美術を観てみるのも面白いですよ。
アーティストの話を聞いてみよう!
アタリサオリ先生と小山大地先生に直接作品についてお話を伺いました。
まず生徒には、作品を観た感想や質問をしてもらい、最後に作家がどのように考え制作しているかを伺いました。
アタリサオリ先生に聞いてみよう!
アタリ先生は、油絵とドローイングの作品。美術解剖学モデル・海斗さんをモデルに制作されます。
生徒からは「背中の筋肉がすごい」「陰影がかっこいい・綺麗」「ポーズセクシー」などの感想がありました。また、下記のような質問がでたので、回答していただきました。
「顔が暗くなっているのはなぜか?」
顔が暗いのは、身体の方を目立たせたいからです。人間は最初に顔を見る習性があるので、あえて顔を描かないようにしています。
「なぜ白い紙ではなく黄土色の紙なのか」
白い紙という選択が私にはなかった。「人を風景のように描きたい」と思って描いているので、黄土色の方がなじみが良いからです。
「なぜこのポーズなのか」
モデルさんに動きながらポーズをいくつもとってもらっている時に、このポーズになり「海岸のようだな」と思って、描きたいと思ったからです。
アタリ先生は、「自然の風景と同じように人の姿をとらえて描くこと」を大事にされているそう。この絵も「人の姿が海岸のようにみえた」とお話を聞くと、腕やお腹の部分が入り江のように見え、肩や背中の筋肉も海岸のゴツゴツした岩のように観えます。だからタイトルも「His shoreline(彼の海岸線)」なんですね!
小山大地先生に聞いてみよう!
小山先生は、日本画で家がある風景の作品。小山先生のテーマはfragment(欠片、断片)。見てきたもの、感じてきたものの欠片を風景の断片として描いているそう。
ストーリーを感じる風景画なので、ここはマンガ・イラスト教室の生徒たちの本領発揮!この絵を見て、家にどんなキャラが住んでいるかなど物語を作ってもらいました。
右の絵
「家には、白髪の髭の生えたおじいさんが住んでいる。」「なぜか狼を10匹飼っている」
「おじいさんはムキムキ。家に帰ると若返って、山を下りると老化する。」
「それがばれないように結界が張られている!」
左の絵
「ムキムキの女性たちが住んでいる!ハーレム!」「おじいさんは、こっちの町にツボを売りに来ている」
と、さすがの発想力!(笑)とても面白いストーリーができました。
小山先生は、自分のことを言われているようでどきっとしたそう。確かにアトリエで絵を描いているときは若返っていて、仕事のために外へ出て電車の窓を見ると老けたなと感じることがあり、それがおじいさんの設定と重なったらしいです。子ども達は、絵から何か感じ取ったのでしょうか(笑)面白いですね。
小山先生は、作品を描く上で観る人に自由にストーリーを考えてほしいから、あえて自分では決め過ぎないようにしているとのこと。観る人によって物語が変わる絵なんて、素敵ですね。
このように、作家自身の思いを聞いてからまた作品を観ると、また新しい視点が加わり、より深く作品を楽しむことができました。
自分の感性を大事にすること
今回行ったのは、対話型美術鑑賞というものを真似した授業です。アメリカのニューヨーク近代美術館で子ども向けに開発された美術の鑑賞法で、美術の知識をもとにするのではなく、その場で抱いた感想や想像をベースに対話を行う方法です。最近は日本でも注目されていて、大阪中之島美術館ではこども向けの鑑賞シートが用意されています。
実は、この授業は前からやりたかったことでした。昔、TV番組でムンクの「叫び」を日本人と外国人に見せて感想を聞くという企画がありました。日本人は、ほとんどが「ムンクの叫びでしょ」と答えるのですが、外国人は「これは何か恐ろしさを感じるわ」など絵に対しての感想を述べるけれど、作家やタイトルは知らない人が多かった。
私はこれがすごく印象に残っていて、作家名やタイトルを覚えるより、自分が観て好きかどうか、どう感じたかが大事だというのに気づかされました。教室の授業でもいつも伝えていることですが、「自分の感性を大事にすること、そしてそれを言葉にして伝える」ことを、アートを通して体験してもらいました。
まとめ
今回はじめての試みでしたが、想像以上に生徒達が自分の意見をしっかりと発表してくれました。私が伝えたかったことを、皆きちんと受け取ってくれていると実感できで、とても嬉しかったです。また作家の意図を超えた解釈に、アタリ先生と小山先生も刺激を受けたそう。「感性がよいし、言葉のチョイスが良く、この年代でここまで発言できるのはすごい!」と生徒のことをすごく褒めてくださって、とても誇らしくなりました(⌒∇⌒)✨
また来年も展示会ができれば、開催したいと思います!
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